[論文]局所超伝導測定によって明らかにする磁気量子臨界性

2026年08月26日

Zn置換した重い電子系超伝導体CeCoIn$_5$における反強磁性量子臨界性を、走査型SQUID顕微鏡による局所測定から調べた研究成果が、米国物理学会が発行する学術誌『Physical Review Letters』に2026年8月26日付で掲載されました。本研究では、局所的に測定した超伝導転移温度 $T_{\mathrm c}$ を新たな制御パラメータとして用いることで、化学置換に伴う空間的不均一性の影響を抑えて磁場侵入長の臨界的振る舞いを明らかにしました。

超伝導体における反強磁性量子臨界性の磁気イメージング
超伝導体における反強磁性量子臨界性の磁気イメージング

化学置換によって調整される超伝導体では、置換濃度の空間的なばらつきによって、量子臨界挙動がしばしば不明瞭になります。本研究では、Zn置換CeCoIn$_5$を対象に、走査型SQUIDによる局所磁場侵入長測定と、超伝導転移温度 $T_{\mathrm c}$の空間マッピングを組み合わせた新しい局所的研究手法を開発しました。

Znの公称濃度ではなく、各測定位置で得られた局所 $T_{\mathrm c}$ を有効な制御パラメータとして用いることで、化学組成の不均一性に由来する曖昧さを大幅に軽減し、異なる試料や微小領域で得られた磁場侵入長を共通の局所的尺度で比較できるようにしました。

この手法により、反強磁性量子臨界点の近傍におけるゼロ温度磁場侵入長の顕著なピークを、化学組成の空間的不均一性による影響を抑えて明瞭に捉えました。磁場侵入長のピーク自体はこれまでの巨視的測定でも報告されており、不純物散乱だけでは説明できないことが示唆されていました。一方、局所 $T_{\mathrm c}$ を制御パラメータとして用いた本研究では、巨視的な空間平均から推定されたものとは大きく異なるピーク形状と臨界的振る舞いが得られました。本研究で得られた結果は、磁気相関によって超伝導の超流動剛性が強く抑制される、無秩序の影響を受けた量子臨界領域の描像と整合しています。

より一般的には、本研究は、局所 $T_{\mathrm c}$ マッピングと局所磁場侵入長測定の組み合わせが、本質的に空間不均一性をもつ超伝導体に隠れた量子臨界性を調べるための汎用的な研究手法となることを示しています。

プレスリリースはこちら

Magnetic quantum criticality inside the superconducting state revealed by penetration depth scaling with local $T_c$
Yusuke Iguchi, Kaede Inoh, Ryosuke Koizumi, and Makoto Yokoyama
Physical Review Letters 137, 096001 (2026)
preprint (arXiv:2604.27507)

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